
マイケル・ポーターの言葉を借りるまでもなく、戦略の本質は「何をやらないか、何を捨てるか」の決定です。しかし、新規事業を立ち上げる熱量に比べ、今やっている既存の事業、あるいは自社が長年培ってきたサービスを「廃止・撤退する」には、その10倍の心理的エネルギーが必要となります。
そこには「投資したコストを取り戻したい(サンクコスト効果)」、あるいは「これまで付き合ってくれた顧客への申し訳なさ」「担当スタッフの雇用の維持」など、理屈ではない感情が絡み合うからです。
一応赤字にはなっていないが、利益率が極めて低く、多くの優秀な人材と経営者の意識(アテンション)を常に占有し続けている事業を、私たちは「ゾンビ事業」と呼びます。この事業そのものは死んでいなくても、この事業に優秀なエンジニアや営業リーダーを張り付け続けていることこそが、未来の成長ドライバーになるべき新規領域への進出を完全に阻んでいるという「機会損失のコスト」に経営者は気づかなければなりません。
事業整理を可能にするためには、あらかじめ社内、および自分の中で以下の「撤退ルール」を設定しておくことです。
これらを事前にスコア化し、基準を下回った場合は、感情の余地を残さず自動的にその事業を「譲渡・統合・またはクローズ」へと移行します。リソースを解放してはじめて、10年後に会社を背負って立つ「次世代の事業」への集中投資が成立するのです。